向浜工場厚生棟を木質化リノベーション!~合板の新たな活用方法を求めて~

 近年頻発している集中豪雨などの異常気象は、地球温暖化に起因する気候変動によって引き起こされていると考えられています。地球温暖化が自然環境や身近な生態系に様々な悪影響を及ぼしている今日、秋田プライウッドをはじめとする森林・木材産業は、大気中にある二酸化炭素を固定化できる最先端に位置しており、合板に代表される木材製品は炭素を貯蔵し続けることが可能で、地球温暖化防止に大きく寄与しています。
 当社は木材利用をさらに推進するため、向浜工場厚生棟(RC造:3階建て)の木質化リノベーション事業に着手、2024年1月に開始した工事が4月に完成、グループ会社であるセイホクホームの監修のもと構想開始から1年をかけた事業が完了し、お客様をお迎えする準備が整いました。

 今回のリノベーションは、壁や床などの内装を合板やフローリング、秋田杉集成材の柱や梁、CLTやLVL、そして合板の製造工程から出る剥き芯まで、当社をはじめセイホクグループ各社の製品をふんだんに使用して木質化を実現しました。一般住宅はもちろん、住宅以外の「非住宅」と呼ばれるジャンルの建築物や、「中層」「大規模建築」といったカテゴリーの建物まで、様々な分野の建築に、合板をはじめとした木製品が新しい形で使用され、新たな需要が創造されるよう、【ショールーム】ともいえる機能を持った空間に生まれ変わりました。

 一般的に住宅建築において合板は、「構造用」として使用されることが多く、また、「フローリングの基材」や「型枠用」など、どちらかと言えば「目に見えない部分」に使用されるイメージが強いかと思います。今回の厚生棟リノベーションでは、通常ならば壁紙や天井板などで隠れてしまう合板を、敢えて前面に出して露出させる「現し」や「躯体現し」と呼ばれる方法で施工、また、合板製品の木口の積層面を見せ意匠性を高めた壁面としています。この他、秋田杉の板面が美しい「内装材 杉小町」で仕上げた壁、当社で生産販売するフローリング「コニファーエース」6柄を採用した床、住宅事業部で加工される「金物工法プレカット」をあしらった廊下部分など、当社とグループ各社の製品を実際に「見て」「触れて」「感じて」いただくことができるようなリノベーションを目指しました。

1階廊下の壁は「内装材 杉小町」、床は当社フローリング「コニファーエース」の「タイガーオーク」を採用
2階廊下は意匠性を求め、全層杉合板の壁に住宅事業部で加工した柱と梁を金物工法で施工

 新しく設けた厚生棟の玄関を入ると当社のロゴマークがお客様を歓迎します。60㎜厚(24㎜+24㎜+12㎜)の超厚合板を加工し入口の正面にしつらえました。これからはこの「資源循環への想いを込めたメビウスマーク」がお客様をお出迎えし、お見送りをさせて頂くことになります。

 厚生棟の階段は1階から2階に上がる部分を「グリーン」に、2階から3階へ続く部分を「オレンジ」に塗り分けて、2色のコーポレートカラーで仕上げました。階段の手すりは既存のものを修繕して再利用し、側桁には西北プライウッド製の「LVL」を採用。踏板(ステップ)にも西北プライウッド製の36㎜厚の「CLT」を採用し、木口の年輪(中板部分)が揃って見えるよう、木製家具を意識した仕上げを行っています。

 厚生棟の2階と3階には新たに「ミーティングルームA・B(2階部分)」と「大会議室(3階部分)」を設けました。その壁面と床材、そして室内に設置したテーブルやイスに趣向を凝らし、当社製品をはじめとする木材利用を通じて「内装の木質化」の魅力を存分に体感できる部屋づくりを心掛けました。
 内装の木質化によってリラックス効果や疲労感の緩和といった身体的・心理的な効果、滑りにくさや調湿機能・消臭や抗菌機能による安全・衛生面での効果、製造や施工時の二酸化炭素排出量の抑制や地域材を積極的に利用することによる地域経済の活性化など、経済的・社会的なさまざまな効果が期待できます。

「ミーティングルームA」の壁面は、合板の木口を見せながら奥行きに差をつけて動きのあるデザインに。床材には「コニファーエース」の「チェリー」を採用。イスは日本で唯一「曲木」の技術を専門として、100年以上の歴史を持つ、秋田県湯沢市にある秋田木工様の製品を採用。
「ミーティングルームB」の壁面は、ヒノキ合板の板面と「超厚合板」の木口の積層面を組み合わせたデザインに。床材には「コニファーエース」の「ウォールナット」を採用。イスは床材に合わせ落ち着いた色合いに。
2階のミーティングルームAとBに配置した「究極のカーボンストックテーブル」。24㎜全層杉合板の端材を貼り合わせ、テーブル表面は合板の木口の積層面だけで表現。秋田公立美術大学の今中教授がデザインし秋田市の家具メーカー萩原製作所様が形にしてくれました。世界に一つだけのオリジナルテーブルです。
3階の「大会議室」は「超厚合板」を「濃茶」「茶」「白」に着色して木口の積層面が見えるように配置し、「ヘリンボーン」状のデザインに。壁材は12㎜全層杉合板を白色に塗装、床材には「コニファーエース」の「チェスナット」を採用。どんな色合いにもマッチする「白」が基調でありイスは「赤」「緑」「黒」「グレー」等全8色を配置。
大会議室のオリジナルテーブルは「スギ」「カラマツ」「トドマツ」「ヒノキ」の4つの樹種からなる合板の「端材」で構成。当社住宅事業部でプレカット加工する際に発生する「端材」をつなぎ合わせ天板としたもので、資源を無駄なく利用するという今中教授の発想にヒントを得て住宅事業部で製作。
テーブル大の天板は幅2250㎜×奥行750㎜のサイズで製作
テーブルの天板は幅1500㎜×奥行750㎜のサイズで製作
幕板も端材を組み合わせて製作

 また厚生棟3階には「備蓄倉庫」を新たに設け、万が一の災害等の時でも向浜工場に勤務する社員が3日間避難することが可能な量の食料や衛生用品・ランタン等の防災用品を準備しました。

 備蓄倉庫の壁にはセイホク製の「パーティクルボード」を採用。トイレの洗面台には「超厚合板」を加工したカウンターを取り付け。リラックス出来る空間になるよう木質化しています。

 厚生棟の外部には、お客様を出迎える花木を植えた中庭と、建物入口に続く玄関アプローチを新たに設けました。秋田の厳しい冬を乗り越え、春先にいち早く良い香りの黄色い花を咲かせる「蝋梅(ロウバイ)」を取り囲むように、マーガレット、ナスタチウム、スーパーチュニア、バコパ、ロベリアなど、季節を感じる色とりどりの花が皆さまを歓迎しています。

蝋梅(ロウバイ)
ロベリア
スーパーチュニア
マーガレットピンク

 玄関アプローチに採用した秋田杉集成材の柱と梁は住宅事業部でプレカットし金物工法で施工、壁の部分には合板の製造工程で発生する「剥き芯(直径50㎜)」を並べました。アプローチの屋根にはクリヤ塗装した全層杉合板を敷き並べ、悪天候の時でもお客様を雨風から守ってくれます。

 築50年が経過し、修繕が必要であったタイミングで実施した厚生棟のリノベーション。普段は構造用を主とした使用法で「平面」として力を発揮する場面が多い合板ですが、発想を転換し「木口の積層面」を「魅せる」ことで意匠性を表現するなど、「合板の新たな活用方法」を提案することができたならば幸いです。日本最大級の生産量を誇る秋田プライウッドは、「植える、育てる、収穫する、上手に使う。そしてまた植える」という【永遠の緑の循環】を守り、【地球環境の保護と住環境の充実】を目指し、これからも国産材合板の無限に広がる活用方法を常に追い求めて参ります。

「情報アラカルト」に掲載されました。
秋田魁新報 2024年8月28日(水)掲載

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